暑い8月の蒸し暑さが一段落し始める頃、早朝には濃い霧が立ち込め始める。月明洞は、昼には日差しが強い真夏のように感じられ、夜になると真冬が訪れてきたかのようだ。このように夜と昼の気温差が大きくなりながら、月明洞は明け方と夜に霧が深く立ち込める時が増えた。
今朝に限って、月明洞にはいつもよりも遥かに濃い霧が立ち込めた。濃い霧によって、月明洞は一片(いっぺん)の水墨画となった。
青々とした木、青い瓦と韓屋(※かんや「ハンオク」)、池の八角亭に霧がかかりながら、月明洞全体が静かで神秘的で夢幻的な感じがした。微(かす)かに白めく薄い布でそっと隠れたままシルエットだけが見え、神秘的な姿を現すから、憧れの的(まと)となる。月明洞の風景に鳥の声が聞こえて、美しい風景はより一層平穏な雰囲気を増し加えてくれる。
『秋の霧は穀物が増え、春の霧は穀物が減る。』という諺のように、秋に稲が実る時に霧がかかると、天気が暖かくて稲が十分に実り、良い実を結ばせ、収穫量が増加するようになるという。霧が立ち込めた風景の中で生き、呼吸する花や木々のより活き活きとした生命力が感じられ、秋の実が熟していくように、主に向かう愛の心もまたこの秋の入口で一層実が結ばれることを祈る。
※韓屋(かんや)…伝統的な朝鮮の建築様式を使用した従来型の家屋。(先生のお母様の家)