以前からあった「慰め」や「ヒーリング」文化が、最近いっそう脚光を浴びている。人々は慰めのフレーズに共感して力を受けたり、塗り絵をしたり、好きなフレーズを書き写したり、美味しい食べ物を食べたり、新しい場所を見て回ったりなど、それなりの方法で癒しに努める。
一方、生計維持に忙しくてヒーリングを贅沢だと考える人々もいる。これ以上は望まないが、ただ慰めと共感が必要なだけ、あるいは癒しによって現状維持するだけでも満足するくらいの素朴な生を夢見る人々に、慰めとヒーリングを越えて「幸せ」を語る本があるので、紹介したい。
鄭明析詩人の詩集「幸福は来る」は、信仰者として箴言集、説教集などの宗教書籍を出版した著者の5冊目の詩集である。
この詩集には、「恋しさ」で始まり、「人生と風」を経て、「心を尽くして」まで3章に渡って76編の作品が収録されており、詩人は神の愛と幸せ、神に向かう人間の愛、自然の摂理、現実世界と神霊な世界などを、時には簡潔にさらりと、時には柔らかく細かく、様々に詩的に表現することに挑戦している。
しかし、詩人が作品で大部分、幸せと愛を詠っているのとは異なり、彼が実際に詩を執筆した環境は「幸せ」とはほど遠く思われることが多く、不思議でもある。そういう環境にもかかわらず幸せを詠う詩人が幸せを見つけていく方法を追っていくうちに、私たちも少しは幸せに近づくのではないかと希望を抱いてみる。
この詩集がへたりこんだ新芽や青春や黄昏に単純な癒しや回復を越えて幸せに導く良い道しるべになってくれることを期待する。良い文章が決まってそうであるように、簡単な言葉で平易に書かれているが、読者の思考の深さに応じて様々な悟りと感動が押し寄せてくるだろう。
また、「世の中のすべての人々はみな詩人」だと言った詩人の言葉のように、彼の詩に触れてみて何かを感じたなら、そこからさらに進んで自分だけの詩を書いてみるきっかけになればと思う。
「幸せは来る」と言ったから、まだ来ていないという意味だろうか。 詩人の作品を通して直接確認してみることをお勧めする。
著者鄭明析は、1945年忠清南道錦山で生まれた。1995年、月刊<文芸思潮>で詩人として登壇後、「霊感の詩」シリーズ5巻を発表し、韓国詩文学100年史を網羅した「韓国詩大辞典」(2011)にその詩10編が掲載された。著者は詩集のほかにも、キリスト教福音宣教会総会長として「救いの御言葉」、「明け方の壇上」、説教集「命の御言葉」、箴言集「天の言葉、私の言葉」など、多くの宗教書籍を執筆した。
また、芸術に造詣が深く、美術、音楽、スポーツ分野で世界文化交流を継続的に行なってきた。 特に、絵画と書道を愛し、多数の作品を残し、ヨーロッパやアルゼンチンの展示で注目され、彼の4冊目の詩集「詩で語る」には自ら墨筆で描いた詩画を入れて披露した。