申師任堂(シン・サイムダン/しんしにんどう※)は、太任(テイム/たいじん)に似て見習おうという意味で「師任堂」という号をつけた。
太任は、中国の周国の文王(ぶんおう)の母の名前だ。
周国の文王は、母の太任を見習って国民に徳を施し、
中国の歴代の王の中で、非常に秀でた王であった。
太任は寛容で厳格であり、義理がたく慈悲深かったと記録されている。
徳と寛容と明哲さを持つしとやかな夫人として、彼女の胎教は教育の嚆矢(こうし「先駆け」)として明記されている。
文王を妊娠した時に行なっていた胎教の内容はこうであった。
「目は邪悪な光を見ず
耳は淫乱な声を聞かず
口は傲慢な言葉を言わなかった。
立っている時は足を踏み外さず
歩く時は歩みを緩やかにし
場所が正しくなければ座らず
肉も正しく切られたものでなければ食べず
目で悪いものを見ず
耳では淫乱な言葉を聞かず
口で悪い言葉を言わなかった。」
このようにして文王を産んだので、文王は聡明で賢明であり、太任が一を教えると百を知ったという。
胎教が、どうして妊娠した女だけの話だろうか。
人を伝道することも、主の命を身ごもることであり、
信仰生活をすることも、自分という命を身ごもることだ。
もう少し善なるものを見ようと努め
もう少し正しく生きるために努力し
もう少し悪いものを遠ざけるのなら
貴重な命が遠く離れていないことが感じられるだろう。
※申師任堂:韓国の5万ウォン札の肖像画であり、5千ウォン札の肖像画である儒学者、李栗谷(り・りっこく)こと李珥(り・じ)の母。韓国では良妻賢母の鑑とされる。古代中国周王朝の文王の母・太任を師として見習うと言う意。