[随筆]
/再び、春/
冬のようなトンネルを越え、
春のような高速道路を力強く走ろう。
暖かい日差しに感謝し春を歌おう。
子供がチューリップの植木鉢をもらって来た。
つぼみがきれいに集まっていて、すぐに花が咲きそうな勢いだ。
ついにつぼみが開いた朝。
母が先に花を見て子供に花が開き始めたと嬉しい気持ちで話してあげた。
しかし子供の顔は泣きべそだ。
「赤い花じゃない。赤い花じゃない。」
子供は赤い色の花を期待していたようだ。
母は何と話してあげたら良いかしばし考えてから
黄色の花もきれいだと話してあげた。
次の日、子供は黄色の花を赤だと言った。
子供が繰り返し言うので、
母は「そうだね、赤い花だね。」と話してあげた。
子供がそうだというのならそうなのだ。
子供は赤い花をとても望んでいるから。
赤ならどうで、黄色ならどうなのか。
どれもきれいな花なのに。
小さなことにあまりに気を取られず、
「そうだ、そういうものだ」
と過ぎ去る知恵も必要だ。
すぐにたくさんの花が咲くだろう。
長かった冬に打ち勝ち、時を迎え命のように咲く花々。
私たちの生(せい)も随時、冬のようなトンネルを過ぎる。
今は花を咲かす時。
願う色の花でなかったとしても失望したり腹を立てず。
冬のようなトンネルを越え、春のような高速道路を力強く走ろう。
暖かい日差しに感謝し春を歌おう。