ひそひそと主がお話をしてくれます!耳をそばだててよーく聞いてくださいね。そしたら、霊がスクスク!心もスクスク!育ちますよ。
◉ 文:チュ・ウンギョン ◉ 絵:ダヘ
黒雲が次々と集まってきたかと思うとすぐに、にわか雨が降りだしました。
“くそっ!よりによって今、雨が降るなんて。”
パンスはぶつぶつ文句を言いながら、雨宿りできる場所を探しました。
幸い岩の丘に羊のリリーの家が見えました。
“ラッキーだ。リリーの家でしばらく雨宿りをしよう。”
“ピンポン” パンスは呼び鈴を押しました。
“どなたですか?”
家の中からリリーの声が聞こえました。
“ぼく、パンスだよ。森の公園にいたら雨に降られたんだ。
雨が止むまで君の家にいてから帰るのはダメかな?”
少し考えてからリリーが冷たく言いました。
“私も雨に降られて帰ってきて毛を脱いで乾かしているところよ。
あんた私の秘密、知ってるでしょ。私の毛はママが綿で作ってくれたフェイク(にせもの)の毛だってこと。
森の動物たちに秘密を全部話した誰かさんのせいで、私がどれほど恥ずかしくて傷ついたことか…。毛を脱いだ姿を二度と誰にも見せたくないの。”
“ちょっと待ってよ!だからぼくはその時、心からごめんねと謝ったじゃないか。
今も根に持ってるってこと?”
パンスの毛は雨でびしょびしょに濡れ、だんだん重くなって寒気がしてきました。
ずっと雨に当っているとパンスはイライラしてきました。
“ピンポン、ピンポン、ピンポン”
呼び鈴を続けて押してもリリーの返事はありませんでした。
“お前、性格がホントおかしいよ。
外見はクール~に許したふりして、中身はブス~っとして、心にはわだかまりが残っているなんて。こうやって雨に打たれながら一度こういう目にあってみろっていうのか?”
その時、稲妻がピカッ、雷がゴロゴロどしん!騒がしく聞こえました。
ビクッと驚いてハッと我に返ったパンスは、ジョシュアが言っていた言葉を思い出しました。
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‘パンス、祝福をもらうための四つ目の方法だ。
自分が仲良くできなかったせいで相手から仲良くされなかったり、いじわるを言われたりすることもあるということを知らなければいけないよ。
“なんでぼくにこんなこと言うの?”, “なんでぼくにこんなことが起きるの?” こういう考えが浮かんだら、絶対相手のせいにするようになる。
そういう時は自分が相手に間違って接したことが何だったのか反省して振り返りなさいってことだ。’
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じっくり考えたパンスはジョシュアの言葉どおりにしてみることにしました。
“ピンポン”
“リリー……。さっきぼく言い過ぎたと思う。本当にごめんね。
怒って口から出るままにひどいこと言っちゃったけど、ほんとはそうじゃないんだ。
外と中が違うのはぼくのほうさ。
ああだこうだでたらめを言うぼくの性格のせいでみんなぼくから離れてしまったけど、きみはそんなぼくに素直に接してくれた。そんなきみが本当にありがたかった。この言葉は本当だよ。”
話し終えてから向きを変えて去ろうとすると、リリーが傘を持って出てきてパンスにさしてくれました。
“びしょびしょに濡れちゃったね。はやく中に入って乾かしましょう。”
パンスは暖かい暖炉で体を乾かし、リリーが作ってくれたココアを飲みながら静かに会話をしました。
“リリー、きみは本当に温かい心を持った友だちだ。ありがとう。”
雨が上がった次の日は日差しがうららかで風も気持ちよかったです。
パンスは家の外から聞こえる騒がしい声で目覚めました。
‘何だろう?’
窓を開けてみると森の動物たちが集まって地面を掘って何かを植えていました。
“何をしているんだろう、行ってみよう。”
一生懸命地面を掘っているモグラのモルに尋ねました。
“今みんな何をしているの?”
“きのう森の広場で相談したことをやってるのさ。集まりしたとき何してたの?”
モルが言い返しました。
“パンスはきのうの集まりの時いなかった。たぶんほかにもっと大事なことがあって集まりを忘れてしまったんだろう。”
サルのモンキーがくすくす笑いました。
パンスは顔を真っ赤にして言いました。
“ぼくが広場にもうすぐ着くっていう時、きみたちはどこかに行ってしまった。
誰も教えてくれないのにぼくが分かるわけないよ。”
“だから約束の時間をちゃんと守ってくるべきだったんだ。必ず後になって騒ぎ立てるんだね。”
“大事な集まりだから遅れるなとあれほど話しても、遅れてくるやつが必ずいる。”
“前もってやらないからそういうことになるんだ。誰かがこんなことを言ってたよ。
<愚か者よ!アリのところにいって学びなさい~。>”
動物たちは各自ひと言ずつ言うとみんなでどっと笑いました。
パンスはあっけにとられました。
どうやって言い返そうか考えたけれど、さっぱり思いつきませんでした。
その時ジョシュアが最後にしてくれた話がぱっと!思い出されました。
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‘パンス、祝福をもらうための五つ目の方法だ。
仲良くするためには、相手から自分の心を傷つけるような言葉や行動をされても我慢すること。
両手を合わせたら「パチン」と音が出るだろう?
手のひらもぶつかれば音が出るし、ぶつからなければ音が出ないように、自分が先に我慢をすれば互いにぶつかることはないということだ。’
‘でも我慢したら自分ばかり損する気がするし、自分ばかり悔しい思いをするってことだ。’
‘そういう時はこうやって考えてごらん。
<空のように高く、海のように広い神様の心に似ている私が理解しよう。>
つくられていない他人の性格のせいでむやみに一緒に争う必要がないということを忘れるな。’
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パンスは大きく息を吸い込んで心に決めました。
‘そう、空のように高く、海のように広い心を持つぼくが我慢しよう。我慢!’
そうやって決心すると不思議なことに心が落ち着きました。
考えてみたら友だちから言われたことも間違いではありませんでした。
“みんな、きのう集まりに遅れて行ったこと本当にごめんね。
どんな話し合いをしたのかちょっと教えてくれないか?”
チーターのジェニーが種と苗を見せながら言いました。
“自然の園で花の祝祭をしようと思って。
いろんな種類の花の種と花の苗をたくさん植えたらどうかという話し合いをしたのさ。
最近チョウチョとハチの数が目立って減って、自然の園に花も実もちゃんとならないから心配だ。”
トラのサンダーも出てきて言いました。
“花だけでなく果実や野菜にもみんなハチやチョウチョが必要だ。
ハチやチョウチョが花粉を運んで花の受精をできなくなったら果実や野菜もできなくて、動物の世界だけでなく全世界が危険になるだろう。”
“ああ、そのとおりだなぁ。小さなチョウチョやハチたちがそれほどにも重要だとは知らなかった。
小さくて大したことないとばかり思ってたけど、小さな努力の汗と小さい仕事が集まって大きな仕事が成されていたということだったのか。すべての命はみんな貴重だから互いに助け合って生きなくては。
さあ~がんばって植えよう。”
自然の園のあちこちで植えておいた花の種と苗は、日の光と風と雨に当たって少しずつ芽を出し始めました。
いつのまにか花のつぼみが開き、自然の園は満開の花でいっぱいになりました。
花の香りに誘われて群れをなしてやってきたハチとチョウチョは休みなく花粉を運びました。
“これで野菜も果実もすくすく育つだろう。
互いに助け仲良く過ごすことがどれだけ大事で幸せなことなのか今、わかった気がする。”
パンスが微笑みながら言いました。
いっしょにいたジョシュアがパンスの肩をポンと叩いて言いました。
“お前も見事にやり遂げたな、パンス。考えてもいなかった困難があったが、友だちと仲良くするために努力する姿が本当にかっこよかった。”
ジョシュアは箱を差し出しながら言いました。
“はい、<仲良くしてこそ神様が下さった祝福をもらえる。」とおっしゃったが、今日がその祝福をもらう日だ。”
“ぼくが何か特別なことしたわけではないのに……。”
箱を開けてみたパンスはびっくりしました。
金色のはちみつと友だちが書いた応援の手紙がびっしり入っていました。
“うわぁ~こんなに!?ぼくが欲しいと願っているものをほんとうに全部もらったよ。”
“それからこれは私からのプレゼントだ。”
ジョシュアは石を一つパンスの手にくれました。
“この石を見なさい。水と雨と風で削って磨いたからつるつるしているだろう?
よく磨かれた石は価値がぐんと上がるように、心と行動をよく磨いてつくっておけば宝石のように輝かしく扱われるものだ。”
パンスははちみつをひとさじすくってほおばりながら目を閉じました。
芳しく甘いはちみつが口の中いっぱいに広がって、自然と幸せな微笑が口元に広まりました。
‘神様、仲良くなれたことが、はちみつよりもっといい祝福をもらったことです。ありがとうございます。’
- おわり –