ひよこ科学者の科学コラム。科学を時代の御言葉で再びスポットライトを当ててみる新概念の科学コラム。
飛行機の速度と振動
カルマン渦による振動は、飛行機の翼でよく見られる。 飛行機の翼付近の窓側の席をとれば、飛行機の翼の先端が上下に揺れているのが見える。空気の流れが飛行機の翼を通過して形成されたカルマン渦が飛行機の翼自体の弾性振動と相互作用することで発生した振動である。
翼が揺れるからといって不安に思う必要はない。飛行機の速度が一定値以下である時は、このような振動は安定しているからである。ところが、飛行機の速度が一定以上に速くなると、深刻な状況になる。振動によって発生する空気の流れが振動をより強化させ、強化された振動がより大きな空気の流れを作って、翼の振動がますます大きくなる。このような現象をフラッター(flutter)現象というが、これが発生すると、飛行機は空中分解する。だから、飛行機の速度はフラッター現象が起こらない範囲に必ず制限されなければならない。タコマ橋で起きた現象も、厳密にはフラッター現象である。
橋を横切って吹く風が作ったカルマン渦の周期と橋の振動数が合致して発生したフラッター現象のせいで、わずか秒速19mの風で崩壊したのである。
橋や飛行機の翼でフラッター現象が起こった場合は、共振が悪く作用したのだが、良く作用する例も多い。もし共振がなければ、今のような無線通信は不可能である。スマートフォンなどの無線機器は、回路の共振周波数を調整して、所望の周波数の電波をキャッチしている。
固体の格子振動
原子・分子の世界においても波動が支配している。物質の状態と条件にしたがって、持つようになる固有の波動の種類は異なるが、粒子は互いにバネで接続されているかのように振動する。
時には、ある条件において特定の形態の波動が不安定になるが、その場合、原子間の結合や流体の安定性に影響を与える。例えば、ある固体の格子振動が不安定になると、タコマ橋が崩壊するように固体の格子振動がますます激しくなり、最終的に結合を維持することができなくなる。
宇宙の均衡と調和、安定性と不安定性は、すべて波動と振動
大気・海洋の循環にも波動が関与している。
一例として、地球の自転によって発生する大気のロスビー波(Rossby wave)が不安定になると、サイクロン発生の原因になったりもする。また、星や銀河の形成にも波動が関与している。星が生成されるためには、宇宙に浮かぶガス雲である星雲が収縮しなければならないが、星雲が収縮するには星雲の直径がジーンズ波長(Jeans wavelength)以上になって、ジーンズ不安定性(Jeans instability)が起きる必要がある。 また、銀河は複数の美しい渦巻状の腕を持っているが、渦巻銀河形成理論としては、スパイラル密度波(spiral density wave)がよく知られている。
このように波動は、日常の領域から原子、分子、地球、宇宙に至るまで幅広い領域に存在し、均衡と調和の程度を伝えている。何かの物質や大気、海洋、星、銀河など、宇宙のすべての万物が安定的に存在することができるかどうかは、波動の安定性によって決定される。その存在物の固有の波動が不安定だと存在することができないし、安定していれば存在することができる。
宇宙の均衡と調和、安定性と不安定性は、すべて波動と振動によって説明することができる。
すべての存在物は、それぞれの固有の波動を持っており、ある存在物が複数の種類の固有の波動を持つことも可能である。このような波動が安定していれば、均衡と調和が保たれて、不安定だと均衡と調和が壊れて存在することができないか、混沌(chaos)現象に転移する。
固有の波動が不安定になる原因としては、タコマ橋の場合のように外部のエネルギーを受ける場合もあるが、内部エネルギーによって自発的に増幅することもある。ある条件において自発的に固有の波動が増幅したら、自ら安定して存在することができないようになる。しかし、安定していることが常に良いわけではない。星の形成で見られるように、星雲が安定しているだけでは星は形成されない。星雲内部の波動が自体重力エネルギーによって増幅されてこそ、星雲が収縮して、新しい創造が起こり、その中で新しい安定を成すことができる。
不調和によって新たな創造と秩序につながる
振動と波動は、神様が創造された調和のとれた世界を示している。すべての万物は、振動と波動を通して互いにやりとりしながら対になって存在している。また、互いに授受作用をしながら不足と過度を調整し、均衡を成して、一体になって存在する。特定の条件においては波動が不安定になって不調和が起きるが、不調和を通じた消滅と無秩序は新たな創造と秩序につながっていく。人間と宇宙を存在せしめる神様の摂理は実に幽玄である。